ベトナム戦争の教訓と１９６７年にモスクワ航空ショーで一斉にベールを脱いだ旧ソ連の高高度超音速機であるＭｉＧ−２３やＭｉＧ−２５に対抗してマクダネル・ダグラス社が開発した全天候大型の対戦闘機用戦闘機。
　しかし現在はマクダネル・ダグラス社がボーイング社に吸収されてしまった為にボーイング社のブランドとなっている。
　このＦ−１５はＦ−４で確立された大型戦闘機の思想というまさにアメリカらしい思想設計の延長線上にある機体である。自動制御システムの導入により大型戦闘機にもかかわらず単座を実現し、運動性能、武装搭載量、航続距離、戦闘機としての全ての能力においてハイスペックを誇る、万能戦闘機である。
だが大型双発戦闘機である為に最新鋭の軽戦闘機に比べると若干、機動性能が落ちるのは仕方がないだろう。
　このＦ−１５は強力なＰ＆Ｗ Ｆ100エンジンと２次元型可変面積式エアインテイク、低翼面荷重の機体の組み合わせによりとても優れた機動性を有し、複合素材の多用によってＦ−４よりも大きい機体でありながら、重量はそれの９割りにも満たない。高揚力装置は主翼後縁のフラップだけであるが大推力のターボファンエンジンを２基装備することによって１．４という推力重量比を得ており、これも上昇、加速、旋回性能を高めるのに一役買っているだろう。
また、最大速度はマッハ２．５とされているが、マッハ０．９前後での空中戦における機動性を重視した機体設計を採っている。そして低空で進入する目標も捉える事の出来るルックダウン能力、大型機に対しては２００ｋｍ前後に達する遠距離捜索能力、多目標追跡能力を持つ高性能火器管制システムＡＰＧ−６３によって機能面でも飛躍的に向上しており、各種の操作がオートメーション化されたことにより単座となった。こうしたことにより海軍のＦ−１４と共に最強の制空戦闘機とも言われている。
　Ｆ−１５には基本型のＡ型の他にその複座型のＢ型、アビオニクスを更新し航続距離を伸ばしたＣ型とその複座型のＤ型がある。
このＣ、Ｄ型は機体下以外に側面にも燃料タンク（増槽）を追加する事が可能で、これらに燃料を満タンで飛行すると大西洋が横断可能となっている。また、Ｆ−１５は１９８３年から多面近代計画ＭＳＩＰが始められている。改修は電子装置の近代化で、新型ミサイルに対応可能となった。そしてＤ型をベースに完全な見直しをはかり、長距離対地攻撃能力、兵器搭載量を１１ｔにまで増加させ、レーダーをＡＰＧ−７０に変えた多目的戦闘機Ｅ型（ストライクイーグル）の５種が現在開発されている。
このＦ−１５Ｅへの改良に複座型のＤ型を採用したのは低空での戦闘爆撃という任務を主にしたＦ−１５Ｅの運用性能を最大限に引き出す為である。また、戦闘機の機動性を向上させる実験機としてＮＡＳＡがＦ−１５Ｂから主翼の前方のエアインテイクの側面にカナード翼を追加したＦ−１５Ｓ／ＭＴＤを運用している。
アメリカ空軍用のＦ−１５は１９８９年までに８９４機が生産終了されており、イスラエルのＦ−１５ＩやサウジアラビアからのＦ−１５Ｓの発注生産を含めると１,０３４機で生産終了される言われている。日本ではライセンス生産を行い、２００機以上を保有している。
　武装は機体に９４０発もの２０ｍｍバルカン砲を装着し、Ｆ−１５Ｅには６ヶ所ものハードポイントに対空地誘導爆弾や空対地ロケットポッドなどの多種の爆弾が装着可能となっている。
　数年前の湾岸戦争ではイスラエル空軍のＦ−１５Ｅの活躍が目ざましく、Ｆ−１５の性能の高さをまざまざと世界に印象づけることとなった。
やはりこれは大容量のペイロードにより対地・対空兵器の両方を装備できる事から、
爆弾を投下すればすぐさま最強の戦闘機へと変化するからであろう。
　しかしながらＦ−１５は高性能戦闘機な反面、とても高価な機体の為に資金力がある国しか保有できず、現在この機体を所有しているのはアメリカ空軍、イスラエル、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、オーマン、そして旧ソ連や中国に隣接し航続距離の長い迎撃機を求めていた日本の航空自衛隊だけになっている。


Ｆ−１５Ｃ Ｄａｔａ　　初飛行：1972.7（YF-15）